短歌仲間のページ


ご寄贈の歌集、または寄稿して下さった短歌等から

私の好きな歌を選んでみましました

(new tanka added: November 5, 2019)

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紫のひかりを産めよ水無月は茄子の根元に藁を敷きやる

                   (東京/本多稜)


旅の夜の眠り浅くてわが心こつんこつんと何かに当たる

                  (愛知/細溝洋子)


「私の罪マイ・シン」のかをりだらうか流れきて銀座界隈夜に入りゆく

                (千葉/田中 薫)


菜の花の芽が育つ日に雲色のセーターの持つ危うい重さ

                  (東京/笹本 碧)


ダナンより戻りたる部屋のテーブルに百合の花びらみな散りてあり

               (ベトナム・京都/梅原ひろみ)


がろんがろん腰に鳴る鐘ベル)はずすとき父から山の匂い立ちたり

                 (東京/鈴木陽美)


澱みなく被爆体験語らるる画面を替へる無言の夫が

               (長崎/田川喜美子)


行きつけのカフェの給仕と初めての握手を交はすテロの翌朝

                 (フランス・東京/服部崇)


自転車は風をきるとき空をゆくカモメの夢をみないだらうか

                    (東京/野原亜莉子)


のぼりゆく秋の音階よりこぼれ厨の床に葡萄ひとつぶ

                    (三重/大谷ゆかり)


わが横でメス動かせる相棒は裁縫上手な大阪女 

                       (東京/松岡秀明)


モルダウの曲の流れるプラハ駅レールジェットの座席は深し

                 (愛知/田中徹尾)


風の音はふらんす語ならん末の娘がこの夏にゆくカナダの森は

 (長野/鈴木香代子)


タクシーの運転手としてつね語る景気の話題を師走から変へる

(東京/高山邦男)


つばめ飛ぶ夏のリスボン亡き母の喜びそうな絵葉書求む

              (ドイツ/小野フェラー雅美)


おほいなるものへの小さき祈りこめ新年の笛にくちびるを当つ

                   (福井/紺野万里)


尺八と成しえぬ竹をあきらめて創りし花筒もらはれゆきぬ

                     (三重/三浦太郎)


夏の夜をふたりでおりぬ呼吸(いき)の間のしじまを銀の魚とびはねる

                    (神奈川/倉石理恵)


はつなつのバンジージャンプ鷹の羽(は)の家紋の血筋をもつてわが飛ぶ                                (東京/花美月)


福島のニュース見るたびわれが持つ国外逃亡者のごとき錯覚

                  (イギリス/渡辺幸一)


足跡は足跡が消し地に埋もるサバンナを生き、去りしものたち

                   (神奈川/三宅徹夫) 


子供(ガマン)はみな我慢しなきゃ、と十歳の吾子の駄洒落をわれのみ解す

(フランス/美帆シボ)


鳥の群れいっせいに向きを変えるとき裏返さるる一枚の空

(愛知/細溝洋子)


北を指す針セシウムに狂ふ春さくらあやふく光りつつ咲く

(岩手/山口明子)


生家跡 爆心地にむく石垣が石の鱗を落しはじめぬ

   (長崎/前川多美江)


たそがれの電車の響きは繰り返す「なに言うてんねん、なに言うてんねん」

(大阪/武富純一)


カナダの楓(かえるで)の紅(こう)甦るささやか れし語感の生き生きとあれば

 (東京/間ルリ)


わが病いの子へと伝わる確率を聞けり産むことなきわが子らよ

(北海道/大塚亜希)


もうみんな大人の顔つき体つき冬のすずめに子供はおらず

(埼玉/藤島秀憲)


の服を求む振りしてテディーベアに着せるTシャツ店に選(え)りおり

(宮城/佐藤冨士子)

  

英語にて語りかけくる孫たちに祖母のズーズー弁も通じるらしき

(岩手/八重樫励子)


百トンの抱卵ニシンの眼の玉が白く凍りて見つめゐる冷凍庫くら)

バンクーバー/唐木浩)


千倉町野菜新鮮組で買う「安田よね」作トマト百円

(アメリカ/クリシュナ智子)


雪のへに並ぶ足跡まろぶあと君との近さ示して残る

(北海道/大塚亜希)


イチロー巻とふ寿司の売らるるシアトルの野球スタジアム熱気に満つる

(アメリカ/楠見房子)


久びさの銀 座の街並変りたり知らぬ町ゆく孤客の吾か

(東京/青木春枝)


五十年 耐えきし妻の顔仰ぐ身は縮めども瞳うつくし

(大阪/田辺東郎)


親猫の逝きてしのちに親猫に見立てられにし夫は忙し

(三重/松井勢津子)


エリー湖の水で両手を洗う朝かすみて岸のカナダは見えず

(アメリカ/青木泰子)


北風が 磨き上げたるごとくにて冬青空も雪富士も冴ゆ

(神奈川/塩 野崎 宏)


仕上げ たる尺八を壊すいくたびか己をこはし己にいどむ

(三重/三浦太郎)


「島 歌」の聞こえるデイゴの木の下でアフリカ·マイマイゆっくり登る

(神奈川/間ルリ)


ま向かいに見えるでないか本物のナイアガラの滝 妻よ見よ見よ

                                (三重/松井久雄)


ゴビ砂漠より来たりていづこへ向かへるか今わが髪を乱せし風は

                      (埼玉/結城文)


海のやうな夜のソファーに愛の行方を見極めむとしておぼれゆけり

                    (香川/兵頭なぎさ)


すみれ摘む心弾めりやがて来る友にと急ぎ花束ねつつ

                   (東京/小金井純子)


みごもれる友に桜餅持ちゆけば掴みて葉ごと美味しそうに食む

                    (大阪/今西麻子)


人の世の秋にて会へば望みなき愛にてあれどかぐはしかりき

                      (埼玉/結城文)


事故と共に青春の記憶失くしたる妹が見下ろす鬼の洗濯岩

                     (宮崎/亀元幸子)


カモミールティーを冷やせり今夜こそ心の棘を抜いてみようか

                (東京/北久保まりこ)


アメリカに帰りたいけど独特のいぐさの香りあなたの香り

                   (滋賀/Kevin Stein)


スキー宿に語り明かしし君修道女となりて三十年モロッコへ発つ  

                (神奈川/八城スナホ)

                                                                                     

忘れむと思えど浮かぶ亡き犬に代わり寄り添う幸という小犬

                (カルガリー/ライリー洋子)


おずおずと仰ぎたるわが決裁を上司は碁石打ちつつ下す

                        (愛知/田中徹尾)


空と地はたいへん遠くわかれても水平線であえるのもある

              (タイ/スパワン・ソパチョット)


レシートの裏に書かれし短歌メモ逝きたる母の財布に残る

                (バンクーバー/佐藤紀子)


長きものはセロリも葱も銃として構へる幼の裡なる野生

                (バンクーバー/菅原美知子)


秋の蝶あのあのあのと我に来る もう少し高く飛んでくれぬか

                  (宮崎/岡本貞子)


囲炉裏ばた縄文杉まで行きしわれを祝ひてくるる島の人人

                  (埼玉/結城文)


ほぐれたる薔薇の蕾の朝露をなむるか蛙今日も暑いぞ

                   (三重/三浦太郎)


ほどほどとふ語を知りてより秋風のごと透明な枷をわが持つ

                      (神奈川/白岩裕子)


群衆に無心に手を振る幼きは背なに負いたるものを知るごと

                      (長崎/倉垣小夜子)


やわらかな闇に包まれ眠る胎児(こ)は海から陸へとあがる夢見る

                   (愛知/武田ますみ)


熱気球ふくらむまでを野に待ちて白夜のただ中わが腕時計

                     (アメリカ/青木泰子)


昼の月かかれる村の畦道をピザ配達のバイクがはしる

                    (山口/柳井靖子)


冬の夜の長い時間を過ごすためゆく注文の多い料理店

                     (山口/又野萋)


靴音に先駆け声の戻りたり女孫の夏のきらきらとして

                  (長崎/倉垣小夜子)

         し          

一人居となりて菜食中心の膳も一つの形を持ちぬ

                   (トロント/高山洋子)


息子(こ)の一周忌すまぬ我家の庭に咲く鬼百合二本猛々しくも

                  (長崎/倉垣小夜子)

                   

膝丈の雪洞を庭にこしらえて日暮れを待ちかね灯を差し入れき

                    (長野/河野千絵)


中世の闇降るごとく冷え冷えと霧降る国の辻よぎりゆく

                 (イギリス/渡辺幸一)


答へられぬ学生に深く立ち入れば星選ぶやうに助詞選びをり

                    (宮城/大口玲子)


龍の字の凧青澄める空にありて子に名付けたき字と決め居たり

                    (神奈川/白岩裕子)


印画紙に焼き付けられし空と雲吾が残像の色を持ちえず

                     (東京/北山寛子)


届きたる木箱は故郷(さと)の吊し柿甘露甘露と粉吹きて食む

               (モントリオール/中谷好三)


丸まりてクイックターンにかへるときうす水色のあさがほ咲(ひら)

                   (山口/中川健次)


垣根より延びし藤蔓わたくしは掴まれさうで攫まれたくて

                     (山口/又野萋)


家康の伝記を借りし少年が忘れていったメッツの帽子

                     (東京/鈴木陽美)


目薬をささねばならぬ猫いとしドリトル先生猫語教えて

                     (三重/松井久雄)


さみしさを言ふ娘(こ)の声に海底の雑音混じる国際電話

                     (埼玉/結城文)


瞬きが出来ぬと言ひて訝しむ少女の睫毛白く凍てつく

                 (バンクーバー/佐藤紀子)


日本語の省きしものを補ひて訳せばかげれるものが逃げゆく

                    (茨城/川村ハツエ)


「イエス、ノー」臆せず言ふも習ひなり異郷に住みて長き年月

                   (トロント/高山洋子)


ジーパンにリュックサックで空港に七十路の母ひらり舞ひ下る

                (モントリオール/中谷好三)


住みたれば都とぞいう人のいる桑名も吾にはそろそろ都

                    (三重/松井勢津子)


赤子の声響かうバスの運転手がマイクに唄うカナダの子守唄(ララバイ)

                     (バンクーバー/藤原葉子)


「好きだよ」と君に言わせるために書くパールピンクのスピーチバルーン

                   (東京/鈴木陽美)


子の妻が日本語の「はい」を覚えたり歯切れ良き「ハイッ」優しき「はあい」               

                (バンクーバー/佐藤紀子)


きびしくも楽しき地球カナダ発鵜沢梢の歌待つわれは

                   (三重/松井久雄)


ドイツ語の動詞も君も常に吾を苦しめるその不規則変化

                   (スイス/洲崎歌織)


賜はりし神戸名物「いかなご」を食みをれば聞く遠き潮騒

                  (モントリオール/中谷好三)


狩りをする友はオーロラながめつつ月餅かじりて鹿待つという

                  (バンクーバー/藤原葉子)


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© Kozue Uzawa 2014